優雅なる憂鬱
塔野夏子

青ざめた薔薇の横貌
月を相手にパントマイムするアルルカン
時計塔の溜息
幾重にも自己複製する記憶
仄昏いカルテ
見えない翼の天使
森の浮遊
虚空を音もなく走る硝子の列車
白い小鳥が描かれた古い小函
シナプスのきらめき
吟遊詩人の俯きがちな眼差し
まどろみの中を散歩する玩具
銀の階段
流動する星座
とめどなく彼方へ辷り去る意識
街の痣
窓をめぐる蔓草の輪舞
揺籃のまわりを漂う歌
夜明けの空にゆっくりと浮かびあがる静脈





自由詩 優雅なる憂鬱 Copyright 塔野夏子 2010-05-05 11:05:22
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