絶対零度
高梁サトル


籠の中の小鳥たちが寄り添って
ささやいている姿を眺めながら
アルコールを呷り言葉と戯れる

自己意識を突放し抹殺し
消失にのみエクスタシーを求める者は
虚無が広がる世界に
制約の中のリビドーを見詰める



死人が何も話せないのをいいことに
生きる為にあなたの魂を売った
まるで少女が貧困から逃れる為に春を売るように

(どうしたんだ
震えが止まらない
誰なんだ
誰が呼んでいるんだ
父さんの亡霊か
私が殺した私の亡霊か)
(お願いだ
首を縦に振ってくれ
違う違う違う
あれは父さんじゃない)
(何でもない
何でもないんだ)



愛について確たる約束もできないくせに
売春は駄目だときつく他人に叱り付ける
自分の愚劣さをけして私は許せない

往来で叫びたくなる衝動を抑える
開かずの間に固く鍵を閉めて

私のやさしい言葉たち
私のいとおしい者たち
今夜は暗くて
よく見えないんだよ
許しておくれ

許しておくれ


自由詩 絶対零度 Copyright 高梁サトル 2010-05-05 04:09:19
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