"森"のはなし
中村 拓人
"森"のはなしをしよう
実家の裏側にある
"森"のはなし
"森"はプラスチックと金属でできていた
"森"にはいくつものCDが(カラスを威嚇するために)
ぶら下げられていた
ときどきビニール袋がとんできて、あちらこちらにひっかかっていた
そこに住みつくひとはだれもいなかった
何かの規則性をもってこわれた洗濯機が配置されていた
ところどころに大根が植えられていた
毎日父は犬をつれて"森"にでかけた
犬はそこでマーキングをした
僕はそこで笛の練習をしたり
友だちをつれてきて歩いたりしたが
最後まで"森"になじめずに家をでた
こないだ実家に帰ったとき
僕は父と"森"で体操をした
ジャンプをしたり首を動かしたり……
空がとても晴れていて
僕はなぜかなみだがながれた
嘘とかではなく
とても素敵な日になった
"森"は世界中いたるところにある