越境
小川 葉
どうぶつは
おとなになってもなく
うれしいときも
かなしいときも
ここにいるよと
いってるみたいに
にんげんはどうだろう
ためしにないてみると
どうしても
なみだがでてしまう
+
ことばが
わたしをおいこしていく
なんどもおいつき
おいこされ
わたしはまだ
だまっている
ひとびとは
さっていき
あなたが
まっていてくれたので
ことばは
もういらなかった
+
まちじゅうを
さがしていた
それは
しあわせなのか
ふしあわせなのか
かくしょうもなく
ただひっそりと
わたしを
まっていた
りくつよりも
うつくしい
あるがままの
わたしのかぞくが
+
きょうあるものが
あすはない
きょうないものが
あすはある
のかもしれない
くれては
のぼる
おひさまをみて
あることを
おもっている
あるひ
あるわたしが
ここにあることを
+
やまにかこまれて
うまれそだったので
やまのむこうには
きのうと
あしたがあるのでした
ようじがあって
やまのむこうにいくひとが
まいとしいるのですが
きのうとあしたを
ちょうせいしに
かれらはいくのだと
おもうのでした
そうして
やまにかこまれたこのちには
ことしもこがねいろの
いねがみのります
やまのむこうから
もどらない
ひともいるのですが
きっといまも
みちにまよいながら
きょうがきょうであることを
ちょうせいしてくれているのだと
そうおもいながら
やまのむこうをみつめ
はははきょうも
いのるのでした