今日という日の、カルカッタ。 
服部 剛

自宅の階段で転び 
あざで膨れた顔になり 
10日ぶりにデイサービスに来た 
杖をつく、お婆さん 

手のひらの神経が痛み 
昨日の深夜に目が覚めて 
寝不足のままデイサービスに来た 
車椅子の、お婆さん 

僕を息子と思いこみ 
(しっかりなさい!)と叱っては 
デイサービスの部屋をそわそわ歩く 
認知症の、お婆さん 

時折、悲しい声をそっと呟く 
お婆さん達を宝のように思い 
僕の首にかけた 
愛するひととお揃いのロザリオを 
ぎゅっと握りしめて 
名前を呼ぶ時 

僕が一人ひとりのお婆さんと歩む 
今日という一日の場面は 
在りし日のマザーが路上の病者を抱いた 
日常のカルカッタに、なる。 








自由詩 今日という日の、カルカッタ。  Copyright 服部 剛 2010-04-28 23:31:02
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