『すげないは、いつの あの頃』
Leaf
故意か否か、“努力”という文字が上半分だけ見えるように放ってあったメモ書き
条件反射に背けた視線で過敏に“怒り”をそうぞうした
母ひとり子ひとり、テーブルと椅子のいびつな互換関係に、穿った脳活性
成長と成熟は純粋さを削りながら均衡を保つ
遅れてやってくる目覚まし時計の罪と罰、行き場の無いリビングにひとり居て
呼び鈴の無い暮らしに馴染まず、慣れていく
その狭間で味蕾失い、未来を垣間見る
家から一歩そとに出てみればいいんだって
行き行きてようやく、華やいだ部分に見初められ、心溶かしてゆくんだろう
打ち拉がれるのは鍵を無くしたからじゃなく
ドアの向こう側の置き手紙に返事を書くことで
ポケットにしまい込み削いだ感情は
右利きだった僕の左腕にこっそりと注がれた
いつも明くる日になれば、紅く滲んだ昨日の出来事を
白ばんだ満月か、遅くとも朝靄に包み隠しやってしまい、連れ運び去ってくれと願う
故意に忘れようとするのには、みな暗黙で了解だ
日も明ければ、誰もが急ぎ足でベルトコンベアーに乗りたがり、立ち枯れてゆく
ひとは確信犯的な無言の雑踏に同化することをある種の喜びとしている
そんな中、石畳の階段にしゃがむのが好きで
真向かいの誰かん家の軒先から、飼い猫が近づいてきては
黙って隣に座ってくれた
と、背後から声だけがする
「そんな馬鹿なこと、したらいかんよ」
母は顔を顰め、包帯の入った薬局の小袋をそっと地面に置き、同化しに立ち去った
階段の先に細く小さく遠ざかる母の背はますます細く小さくみえた
赤の他人の、飼い猫はじっと傍に居て、目を閉じ、日溜まりを待っている
色の違いを確かめたっていいじゃないか、と
まとまらない心が一日分ひとまとめにして呟いた
「行ってらっしゃい」「おかえりなさい」「おやすみなさい」
今日のこと、手紙にするから
昨日のことは知らない