珈琲たいむ 
服部 剛

五十歳で転職した新人さんが 
仕事の後に、眉を八の字にして 
僕のところにやって来て 
日々の不安を、打ち明けた。 

物書き志望でベテラン介護士の僕と 
人生をやり直そうとしている彼が 
「正職」の椅子を争っている事など 
露も知らずに 

まじめな彼は、話し続け 
胸中複雑な僕は、耳を傾け・・・ 

周囲の職員はいつのまにか 
姿を消して 
彼と僕の二人だけ 
部屋に残って肩を並べていた 

「さて、今日で全部は教えられないから」 

果てない話を、僕は打ち切り 
家に帰ろうと背を向けると 
不安げに書類をみつめる 
彼の姿は、昔の僕の姿のようで 

帰る前に 
ゆげを昇らせる 
一杯の珈琲を入れて 
彼の机の上に、置いた。 





自由詩 珈琲たいむ  Copyright 服部 剛 2010-04-27 23:44:03
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