お好み焼き
春日線香

お好み焼きちょうだい
と声かけて
奥からハーイと生返事
大丈夫かなぁと思いながら
しばらく待っていれば
窓の外に山が見える
頂上はきれいな銀灰色
杉の梢は空高く
引っ張ればぼろっと落ちそうだ
と見る間に車椅子が転げてきて
いやあれは乳母車かな
ごろんごろんと坂道を下る
遠く赤ん坊の泣き声が聞こえて
つるりと滑った坂の先に
お椀みたいに丸い池
ああっ あぶない
赤ちゃんが落ちる!
はらはらどきどきしていると
奥からおばさんが出てきて
じゃあこれ
と金魚鉢くれて
鉄板にじゃーっと広げる
闇に浮かぶ白い月
ああっ あの中で溺れているのは
さっきの赤ちゃん!
と思う間にそれは金魚に変わって
音たてず口をぱくぱくさせて
こんがり焼けてしまう


自由詩 お好み焼き Copyright 春日線香 2010-04-27 11:44:13
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