月に暈がかかって新しい靴を僕は紙ナプキンで磨く
竜門勇気


眠たいね
(そ)んなこたないさ
もう日がのぼってる
(そ)んなのは嘘さ
僕らは疲れてるし もう充分過ぎる位働いたよ

でもだれにくらべて

いつも誰かと自分を比べてたら
気づいてしまうだろ?
だからみんな
し ないんだ
そんなことは し ないんだ

つくしはとっくに
スギナに姿を変えた
なにを感じて
どんな言葉を思い出せばいいんだろうね
僕ら人間なんてやつは
愚かだよ
たぶん
なにも出来ないでいて
そんな無力の中で
出来る出来ないで戦ってる
馬鹿らしいだろ
ふざけんなだろ


でもつくしもそんなもんなんだ
大自然は僕らを気に止めないって
なんにもできないんだ
どうせそこにいるだけだ
杉の木が幾千年生きても
古いだけだ
感じたいだけ感じて
観光客はコンビニエンスストアで
買い物して帰るだけだ

どんなに世界をくまなく歩いても
ただそれだけのこと
どんなに言葉を上手く使えても
ただそれだけのこと
でも君の覚えてることは
絶対に消えはしない
君が望んでも
世界が望んでも

だから今日のところは
出かけようじゃないか
無意味に見えることが多すぎて
立ち上がれない日は
そのまんまでいいさ
めんどくせーなら
それはただめんどーなことなだけさ
いい気な連中はいい気ばっかりでスカスカだ
めんどくせーほうが
ちょっとだけマシだと思うよ
俺は 俺なだけの存在だけど
あんたがめんどくせーことを
なんのかんのと説教はしねーのさ

夜になればクタクタ
馬鹿と遊ぶのもくたびれんな
大丈夫だ賢いのなんて俺とあんただけだ
笑うなよ
よっぽどくたびれてんだな
掘れる穴は深めがいい
どうせ収まる頃にはもっと太ってる
ロープならもっと太くだ
紐に吊れる人生なんてねーよ

目が覚めるまでは
俺に任せろ
誰も気づかないように
あんたの靴を磨いておくよ
くたびれた内側のつま先と
すり切れかけた靴底と
暇があれば泥に汚れた靴ひもを


自由詩 月に暈がかかって新しい靴を僕は紙ナプキンで磨く Copyright 竜門勇気 2010-04-27 06:22:27
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