とんびのいない空
nick
宿題のない私は
上り坂の頂点で飛行機と出会った
青と白のきれいな紛争に
足を止め目を細め 見上げた
この旅はすぐに終わるだろう
私よりも早いだろう
この空にはとんびがいない
もういない
祖父の遺した時計の音で
写真の彼が時々息をしたようだった
思い出話の中の炎が
彼の魂をも焦がそうとしたのではないかと
せつなくなった
日陰を踏まないように歩き
風を吸い込むと体が軽くなった
晴れた空にはとんびがいない
これからもずっといない
誰かが死んで、私が死んで、
それでも永遠にいない
そうでなければいけない