途中経過
ホロウ・シカエルボク




強い決意が悪い事態を引き寄せる
そんな歪な予感を含んだ朝
煩いほどの太陽が空にあったが
ウェザーニューズは後雨だと告げていた
構ってる場合じゃない
濡れるか濡れないか分からないような事物を
軽い空腹感が幾つかのスペルに作用する
俺は苦笑いしてそこから書き直す
そんな繰り返しから生まれてくるものになにを任せようと考えているのか
考えても仕方のないことだと分かっていながらも
ちょっとした飴玉みたいにそれを求めてしまう
誰かの高笑いが廊下で反響している
最も幸せの近くに居るのは愚かな連中さ
欠伸をしたら次のフレーズが少し歪んだ
愉快なのでそのまま続けることにした
なぁ、もうすぐ5月なんてなにかの間違いじゃないのかい
2月あたりをどこかに忘れてきたような気がする
例えば、あの
埃でうっすらと白くなった黒いカラーボックスの裏側あたりに
暇を持て余していた俺は本当にそこに手を突っ込んで探ってみた
確かに2月が出てきたけれど1997と記されていた
だけど俺に取ってみればそれは納得出来なくもないことだったので
「2月はカラーボックスの裏側に忘れられていた」という結論が滞りなく下された
疑問がひとつ片付くたびに
妙に落ち着いたり落ち着かなくなったりして椅子にもたれる
一番片付かないのは日常というあってないようなくくり
俺は日常の為に生きている人間ではないから
靴を履いて外に出掛けた
どこに行く当てもなかったけれど
どこにも行き着かない考えを遊ばせているよりは遥かに建設的だった
書きかけのフレーズはポケットに忍ばせた
まだ太陽が空にあったので
後雨なんて嘘だろうと鼻で笑い飛ばした
降れば降ったで太陽があったことをキレイに忘れるのだ…おっと
安い文学少女が書くみたいな
安いポエムに仕上げたりなんかしないぜ、こんないっときの気分なんて
どこの誰にも槍玉にあげられるような大層な事じゃない
生まれてこの方ウンザリするほど目の前を通り過ぎてきた
妙に現実的なまぼろしのひとつに過ぎないさ
交差点に立って
昔大きなショッピングセンターだった更地を眺めた
なにもないってことが一番確かなこと
ほんとはいつだってそんなものしかなかった
青に変わる信号に従って歩みを進めたけれど
どこに行こうとしているのか依然として分からなかった
街の外れの河のほとりの
汚れたベンチに腰を下ろして
書きかけのフレーズに幾つも手を入れながら
やろうとしていた方向に駒を進めた
脚をなくしたみたいな気分でも
先に進むことは容易なことなのだ―とりわけこういう種類の試みではね
ひとつふたつなくした気分でいる方がラッキーなことだってある、だけどもちろん俺はそんなこと重要だとは考えはしないし
誰かにそんな話をこんこんとすることもない
それはひとつの結果のひとつの要因に過ぎない
法則が必要なものを追いかけている訳ではないのだ
空を見上げると雲が増え始めていた
天気予報は果たして当たるかな
家に帰るのはもう少し先でもいい、そう、例えば
この寝ぼけたツラを最初の雨の一滴が打ってからでも
迷い犬と少しマジメにケンカしたら
通りすがりの女子高生に大いに笑われた
書き上げたフレーズはそのときなくした
いまはベランダで雨を見上げているところさ






自由詩 途中経過 Copyright ホロウ・シカエルボク 2010-04-26 16:56:29
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