春の屋上
塔野夏子

柵に沿って並べられたプランターには
とりどりのチューリップ
此処は白い建物の屋上

見あげる空も白い
其処には半透明の歯車がいくつか
組み合わさってゆっくりと回っている

それらは多分
さっきから意識を蝕みやまないナルシスティックな憂鬱を
増幅させる装置なのだ

地上のざわめきが
だんだん遠ざかる気がする

胸から心臓が抜けだして
脈打つ赤い風船になって白い空へと
昇っていってしまいそうな気がする……





自由詩 春の屋上 Copyright 塔野夏子 2010-04-25 21:40:51
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