風と 洗濯棒
砂木
春風の吹く中 洗濯物を表にかける
ポールを二本立たせて
横の棒には鎖を巻いている
ハンガーの丸い先を 鎖の輪にかける
強い風に さらわれてしまわないように
ポールの立つ前には 鯉の泳ぐ池がある
山の水をひいて 貯えられた清水
雪解けの冷たい水が山肌をくだった
陽射しが枯葉の迷路を打ち破り晒す光り
激しい春風に水面がさざ波を打つ
映るポールと洗濯物も
小さく曲がった揺れの群れになり
一本の濁流の尾のように 水滴をとばす
しかし 土にたてられたポールは
鎖を巻いた横棒とかけられた洗濯物を
支えて 真直ぐに空の下 役に立っている
強い風に時折 からまれながら
右も左も 重りの石の中 ただ つったって
しぶきを散らして 水が風に遊ばれて
映るものが かき乱されているのだけれど
ああ もしかしたら あの飛び散るつぶては
風を受け止めて抱きしめているのではないかしら
ただ つったっているポールの受けてる真の姿を
共に 空の下 山を下る水の水面に つなぎ続け
水中の鯉が深く泳ぎ風を避ける
貯められた池の水面が
たえてとどまる事の出来ない風を
とどめながら たちいかせ
映し出されたポールは 揺れ続けるけれど
生まれた時から真直ぐな
洗濯物のためのポールは 変わらない
日が暮れても 夜に晒す