植物の日課
佐藤真夏

手が五股に分かれているのって、本当はとても気持ちが悪いことじゃないかってことに気付いたのは小学4年生くらいのときで、
「人はもともとみんなサカナだったんだよ」
って先生が言ったりしたからどうして指は5本に分かれたんだろう、とか分かれる前の形態を好き勝手に想像したりしながら指先を動かすことになったんだよ。もぞもぞ。
ほんとうに、指の間にはしっかりとカエルの水かきのようなヒラヒラがあって
遥か昔は水の中で生活していたような気もしてきそうだったから、私は平泳ぎの選手になって良かったなと思った。

手の仕組みを観察していると、指が動くたび手の甲にまっすぐな筋が浮き上がっていて、その機械的な様子が教育テレビの人形劇で使われる人形のいたるところにくっついている紐みたいで、指ってもしかしたら肌色のミミズ、で、それが手首に操られているようなものかもしれない、とか考えながら鶏につつかれているミミズを見ていたときに
「ミミズは目がないのにひかりの方向がわかるんだよ」
って先生が教えてくれたから
「それって花みたい、かわいい」
って言って、髪型を整えるように爪をむしることになったんだよ。


自由詩 植物の日課 Copyright 佐藤真夏 2010-04-25 12:36:24
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