世界はこぼれ落ちない
みぞるる
途端にわからなくなる
昔みたいにものごとを考えることがなくて
一人暮らしを好みたいから
料理が楽しいと言ってみたりする
途端にわからなくなる
酒で溢れた大部屋も
男の 誘惑する視線につかまった瞬間
世界で一番狭い部屋になる
途端にわからなくなる
行く場所も帰る場所も
あたしの求めていないところなのに
まるきり悲しくならない
途端にわからなくなる
好きでいたはずの男たちは
ひっきりなしにただの人となり
そのたびアタシは死んでいく
途端にわからなくなる
世界のひとびとは
あたしの囲む輪の中で
ひしめき合い
これからも
ずっと
ずっと
こぼれ落ちたりはしない
その美しすぎる微笑みをたたえ続け
その透き通る声であたしを呼び続け
きれいだったいくつものアタシを
呼び戻そうとする
だからあたしの方が
途端に輪からなくなりたくなる