rr
イシダユーリ

なつかしい音


なつかしい音


なつかしい音



結局 わかんなかったな


なつかしい首


なつかしい首


なつかしい首



めんどくさいんだ

たちんぼのまんま すがりつくこといがいに

夢中になれることがないんだ



なつかしい 耳を そぎ落とそうとする

きみが 見ないんなら 踊らないよ

だって なつかしい 燃えないんだ

なつかしい 耳
ゆるくあいた 口

あそこの路地でふたてにわかれたら
文通しよう 死ぬまで
逃げおおせる ことにしよう 
白いチョーク 夜の万年筆 
にじむ なつかしい 粉をふいて
豆電球に かざし 空気コロネ
文通しよう 
ひみつの住所で
殺された伝書鳩でも
薄暗がり
神社の境内に
ひっかけられたペンキ
きみが 見るなら
きみの 目を つぶすために
踊るよ
嘘っぱちの
ただれ
石段にたどりつく

きみから
部位が
とびちって
なつかしい
なつかしい
なつかしい首
なつかしい耳
なつかしい指
なつかしい骨
草をおしつぶす
湖を汚し
結局
わかんなかったな
ほら
ここんとこの
継ぎ目で
あたしの細胞
死んでるから
もう
きみのものだよ
って
ねむたい目した
どうだって
よかったんだろう
だれだって
よかったんだろう


文通しよう
筆跡を
しらなかったから
もう
だれだって
よかった
死ぬまで
きもちわるい
あったかい

からめあって
すごすご
青白い
朝を
むかえるんだろう


きみにとてもよくにあう
群青色の紙に
きみにとてもよくにあう と
なつかしい 音

なつかしい 音

なつかしい 音



きみにとてもよくにあう
この朝は


道路に
たべかけの
軟骨が
おちている
くにくに

奥歯で
かんだあと
きみが
すてたんだと
吐き捨てて
手のひらに
埋める



なつかしい 首  折れたまま   わらって     はしっていく




自由詩 rr Copyright イシダユーリ 2010-04-19 14:43:55
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