電氣ブランに灼ける空
鵜飼千代子

             花屋敷のジェットコースターが
             崩れ落ちそうに走り抜けて行く

             いいじゃない
             ガタガタが新しくて

             柔らかな微笑みを湛えるあなたは
             たぶん

             (なにを考えているのだろう)

             なんて
             思っている 

             わたしは
             別世界の生き物じゃないよ
             あなたの履歴にいるでしょう
             似非のわたしが

             わたしがあなたの思い出の
             似非なのか
             輪廻なのかもしれないね

             金の魂が空をはためく
             洋服が汚れてしまいそうな暖簾の親父の店が
             わたしを迎える

             「モツは食べられないんです」って
             泣いてしまいそうな わたしさえ
             蔑むこと無く
             すべてすべて
             抱きとめて

             浅草の夜は行く

             電氣ブランもホッピーも
             あなたと世界を包み込み
             温かな夕餉へと 誘って行く

             昨日までの当たり前が
             偽者に思えてしまうような
             そんな 優しい 
             巡り逢いだったのだろう

             今日も 電氣ブランが
             カランと氷を鳴らせながら
             わたしの胃を
             焼いている
            
             ありがとう だよねって
             こころの底から

             言っている 

             幸せの在り処は
             突拍子も無いものなのだろうと
             温もりの中で

             わたしを 
             戒めている 
           
  

        2000.05.30.    YIB01036    Tamami Moegi.
        初出 NIFTY SERVE FPOEM


自由詩 電氣ブランに灼ける空 Copyright 鵜飼千代子 2010-04-19 08:09:07
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