飛んでいる
飛んでいる
　　　　　はげしいビートだ
　　　　　もう世界もおわりだから
　　　　　　　　　　　　　　　　走ってゆくしかないのだ
　　　　　　　　　　　　　　　　酸性雨がふっている
　　　　　　　　赤い傘さして
　　　　　　　　ぼくはバスにのる
世界のおわり
どこか
　　　　　　　　ハードボイルド　　　　
　　　　　　　　ワンダーランド
　　　　　　　　村上春樹の
　　　　　　　　『ノルウエーの森』
　
　　　　　　　　　　　　　　　　草深い土地で　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　ぼくは墓堀になる
　　　　　びしょびしょ雨にうたれながら
　　　　　びしょびしょ雨にうたれながら
　　　　　　　　　　　　　　　　ぼくはビートをあびるのだ
　　　　　　　　　　　　　　　　Ｄｅｅｐ　Ｐｕｒｐｌｅ
　　　　　ＷＯＭＡＮ　ＦＲＯＭ　ＴＯＫＹＯ
　　　　　腐乱した女の歯型
　　　　　　　　　　　　　　　　啄木のようにぼくはひとりで
　　　　　　　　　　　　　　　　墓を掘る
世界のおわり
がちかいからだ
　　　　　雨はかぎりなくふりつづくのだ
　　　　　何億年にもわたって

　　　　　　　　　　　　　　　　浮いてしまうのだ
　　　　　　　　　　　　　　　　浮きあがってしまうのだ
　　　　　　　　濁流の海になってしまうのだ
　　　　　　　　東京は沈没する
　　　　　　　　ニューヨークも
　　　　　　　　シドニーも
　　　　　　　　ブラジリアも
　　　　　　　　カイロも
　　　　　　　　パリも
　　　　　　　　北京も
　　　　　　　　　　　　　　　　流出してしまうのだ
　　　　　　　　　　　　　　　　夜明けはちかい
　　　　　　　　散乱する都市の機能
　　　　　　　　通信は不可能だ
　　　　　　　　　　　　　　　　ちりじりになってしまう
　　　　　　　　　　　　　　　　死者や行方不明者は
　　　　　　　　　　　　　　　　掌握できない
　　　　　　　

　　　　　　　　　　ノアの箱舟もない
　　　　　　　　　　海もない
　　　　　　　　　　テレビも
　　　　　　　　　　ラジオもない

　　　　　　　　　　　　　　　　家も
　　　　　　　　　　　　　　　　車も
　　　　　　　　　　　　　　　　冷蔵庫も
　　　　　　　　　　　　　　　　家具も
　　　　　　　　　　　　　　　　食料も
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　波のうえにういている
飛んでいる
飛んでいる
はげしいビートで
告げているのだ
走る
走る
雨がふりやないまでは
ロックバンドのビートはやまない


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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００４・１０・５