オーウェルさんへ
よーかん
傘と長靴の下校時間
ピンポンパンポン
市が丁寧にもまた
不審者から子供達を守るよう
善良市民に呼びかけます
ボクはこの
当たり前な日常のど真ん中にて
また
「散髪しといて良かったな」
なんて
安堵のため息をつくありさまなのです
そしてまた
健気にも
斜めに吹き込む雨にもマケズ
コウモリ傘をワザと高めにさしたり
するしだいでもあるのです
男達が
パチンコ屋や漫画喫茶に
逃げ込まざるえない
明るい地方都市の現実に
一人で立ち向かう気力なんて
失せていますから
そして
肩身を狭めそうになる
自分の未熟を
恥じ
また冷笑しながら
実際
どれだけ
犯罪が
この街でおこっているのか
どなたもホントは
知りゃしないのだけれど
BSニュースでまた
30代男が家族を殺して
家に火をつけていましたから
ここも大事件ッたけの不安を
刷り込まれてるオトナ達の街なのです
老人でもない限り
男は一人
理由もなく
あつかましくも
散歩したりしてはいけないのです
あきらめるしかない
のです
明るい地方都市の
平和を乱してはいけませんから
「奴隷に自由なんぞありゃしない」
なんぞと毒づいて
苦笑いでもしたら
密告されるのです
BSニュースでまた
どこかの30代が
家族を殺して家に火をつけて
どこでも30代が
家族殺して火をつけて
いつでもどこでも30代がまた
「そんなの気にしすぎ」
なんぞと笑う輩な
善良市民に言ってもしょうがないけれど
確かにボクも
心配なの
そりゃ理解できますし
けれど
あえてです
あの、失礼します
オイラが
「もし」犯罪者すんだったら
スーツにネクタイで
ブリーフケースに
小さなお土産袋も持ったりして
携帯スパッと確認しながら
テキパキ歩くけどな
この街なら
こんなご時世だし
なんぞとまた
苦笑いしそうになって
しまいそうになり
とりあえず
落ち着いた足取りで
喫茶店を探し
礼儀正しく
ブレンドコーヒーを頼み
たばこに火を灯すのです
ああこの感じも
不審人物っぽいかもな
なんて
苦笑いしそうになるのを
こらえながら
ここは
日本の地方都市で
ボクは三十代日本人男性ですから