新宿
ゆうか


東京、新宿、夜を行く
明るいパネルに挟まれた
道路はあらゆるシルエットたちを
幾何学的にまき散らす

豆電球のフィラメントを
アリの足とするなら
この街の電光源は
一体、何に例えられよう

ある人はこう言った
「夜空の月が、増えたようだ」と

驚くほどの明るさも
所詮は、スイッチ一つ
消えてしまうというのに

日常という空間には
培養土のように溶けた歪がある
目にはみえないその糸屑を
映し出す光の束が
駅までの道を遠ざける

仰ぎ見る
人の望みを
欲の向かう
終点を

神様のお膝元も
こんな風に明るいのかもしれない
しかし、それを知る時は
この夜よりも深い静けさを
知る時

東京、新宿、夜を行く
明るいパネルに挟まれた
道路に人が流れていく

この街には光が溢れ
実体とシルエットが結びつかない
帰宅所を探す私のシルエットは、今
あの傾いた電信柱と平行線を漂っている






自由詩 新宿 Copyright ゆうか 2010-04-16 22:36:30
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