「雨の日、その一日が悲しいのは気のせい」
ベンジャミン
雨の日、その一日が悲しいのは気のせい
誰かが言っていました
「雨は世界の涙です」
それは違うと思います
僕には僕の世界があって
本当に世界と言ったら
それは途方もなく広すぎるのです
すっかり色を変えたアスファルトを踏みながら
宇宙のことを考えたりしました
ところどころキラキラとするのは星みたいだ
なんてことを考えたりしました
それが星なら僕なんか小さすぎて
そんな小さな僕が宇宙を踏んで歩くのは不思議だと
そんなことを考えたりしました
少し疲れたのでしゃがみこんで
歩きながら見たキラキラが見えなくなってしまって
ふと悲しみがこみあげてくるのを我慢しました
我慢している自分を悲しいと思うことも我慢しました
世界はあまりに広いので
こんなちっぽけな悲しみを我慢する悲しみなんて
雨粒一つの価値もないと思えたからです
ならば僕はこの雨の日に
世界の悲しみのいくつかをしっかりと受け止めて
今日という日を悲しくしないでいようと思いました
見上げれば
はるか上空から降りてくる無数の雨が
世界と僕とをつないでいる線のように感じました
それはきっと気のせいです
だから
雨の日、その一日が悲しいのも気のせい
瞳にあふれた雨がこぼれて
まるで涙のように流れてゆくのも
きっと気のせい