観劇
瑠王

やたらと動きのよい男は
チーフを取り出して涙を拭う
そして顔を傾けて囁く
女は台本通りに今宵二度目の愛を誓い
嗚呼、悲劇などないのだ、と


そして舞台袖の暗がりでは
黒髪を撫でつけた男が
ひとり唇を噛んでいる


自由詩 観劇 Copyright 瑠王 2010-04-14 23:51:03
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