beyond/
ねことら






くちびるからこぼれた息の糸は青くのびて、しなやかに細い鋼材として夜を螺旋した、あなたと交わした指止めはあまり物の工具のようで、小さな廃墟のテーブルと、小さな廃墟のランプと、よわい背骨のふぞろいにささえられ咲こうとする物語の、扉のつなぎめにまだゆきあたらない、





おもえばわたしたちが冬だったころ、ふれたことのない個室のなかで、さまざまな標識は輪郭を失い死にたえていた、窓枠のふるえがこわくてたまらなかったことをあなたはしっていましたか、抜きとられた夜の緯度のなかに、幼いありようで保存された繊細を、その出口のない痛みを、ひしゃげたアルミニウムの月はみじかくゆれて、あなたと繰り返した事故は部屋底に仄じろく溜まった、他人行儀な顔をしたそれらはまるでプランクトンのように透きとおり、透きとおりする、ただひとつ開けはなたれたしずかなベランダでほほえみながら、かなしみの途絶と、生きようとした方角を、見送ることしかできなかったわたしたちへ、あの冬のすべての、色は、匂いは、





薄いブランケットを剥がれながら、白いレース、白いフローリング、あらゆる行為が終点をむかえても、わたしたちはかわるがわるねむろうとする、もう虹彩がいれかわることのない曇った眼で、かわるがわるいきようとする、いくたびも新しい鍵はさしだされ、風化し、役割のない傷口にまたはしりだしても、ちいさなティースプーンのひかりのようにふるえた熱が、ここからはじまる微速度のベクトルに乗り、健やかに咲きはじめる物語がある、美しい境界線は燃えていく





音のない、朝の















自由詩 beyond/ Copyright ねことら 2010-04-14 23:48:07
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