豆花火
八男(はちおとこ)

小豆を御空に投げて
はじけたら豆花火


私の体は黒い作務衣の洗濯をする
私の手は 開かなかった瓶を
無理に開けようとした力のせいで痛い



小豆を御空に投げて
はじけたら老婆が浮かぶ


私の体は黒い作務衣から毒を搾る


そうしていてなぜか小豆のことが急に
頭の中に現れて離れない


竹笊の中に海になって渦潮をつくっている小豆


祭りだったか夢だったか


思えば小豆のことを
長い間忘れていたなあ


そして小豆のことを頭から離すまいと思ったときから
小豆はどこかかなたへ消えて行った



小豆を御空に投げて
はじけたら豆花火


老婆が歌っていた
あの歌が懐かしい


そしてもう
小豆の形や色
匂い
歯並び
みんな
思い出せない 






自由詩 豆花火 Copyright 八男(はちおとこ) 2010-04-14 11:49:17
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