拝啓、夏目先生
三奈
すでに巣食う私の心には
あまりにも重い言葉だと思うのです
色に例えるなら、情熱的な赤
でも、静かに降り続ける霧雨のように
柔らかくこの手を濡らすもの
傍から見れば「幸せの象徴」のようなその言葉には
実は、大きな錘がついていて
聞いた瞬間に何故だかずしんと
身体が重くなるのです
離さない、と言われているようで
逃がさない、と言われているようで
悲しいかな嬉しいかな
涙が頬を伝うのです
そんな窮屈な思いをさせるのは
ひどくひどく可哀想なので
今日もまた、貴方の言葉を借りたいと思います
拝啓、夏目先生
月下の薄闇
穏やかな静寂
「月が綺麗ですね」
見えない相手にそう呟いた