拝啓、夏目先生
三奈

すでに巣食う私の心には
あまりにも重い言葉だと思うのです

色に例えるなら、情熱的な赤
でも、静かに降り続ける霧雨のように
柔らかくこの手を濡らすもの

傍から見れば「幸せの象徴」のようなその言葉には
実は、大きな錘がついていて
聞いた瞬間に何故だかずしんと
身体が重くなるのです

離さない、と言われているようで
逃がさない、と言われているようで
悲しいかな嬉しいかな
涙が頬を伝うのです

そんな窮屈な思いをさせるのは
ひどくひどく可哀想なので
今日もまた、貴方の言葉を借りたいと思います



拝啓、夏目先生



月下の薄闇
穏やかな静寂

「月が綺麗ですね」

見えない相手にそう呟いた


自由詩 拝啓、夏目先生 Copyright 三奈 2010-04-12 18:26:28
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