桜吹雪
atsuchan69
篠突く雨の肌寒い日を過ぎて
惨い風に揺さぶられては砌を過ごし、
未だ、未だ幾日かの――
いつとも知れぬ散りぎわを
華やかな夜の影に埋もれ
ふたたび音もなく舞う、桜吹雪
いつか濃い朝靄に隠れてさえ
尚、さかんに花を散らして
どの花たちも一切語らず、
ただ厳しい冬の立ち去ったのち
艶やかに芽吹いた若葉の繁り
柔らな樹々のそびえる森に
やがて梢に残された花たちには
白く爛れた真昼の光が溢れ
春めいて、
春めいて、
春のよき日に
花は咲きほころんで
さくら、桜たちよ
久遠につづく安らぎの地に
夢幻の傍らに舞い散る
幽かに色めいた花たちよ
※平成二十二年四月十一日 吉野山―中千本にて