綺麗な目玉に咲く綺麗な花
敬語
僕はただ綺麗な花が見たいだけなんだ。
道端で丸くて綺麗なものを拾ったのは、学校から帰る途中のことだった。
ただそれが何であるのかはわからなかったが、綺麗であることだけは間違いなかった。
だから、僕はそれを家に持って帰った。
しかし、その丸くて綺麗なものが何かの目玉であったと知ったのは、母親に「そんな気味の悪い目玉の玩具、早く捨ててきなさい」と怒られたときだった。
僕は驚いた。だって道端に落ちている目玉なんて、見たことも聞いたこともないから。
でも、僕は捨てなかった。目玉は捨てなかった。
何故なら、それは綺麗だったから。それがなんであろうと気にならない程に綺麗だったからだ。
そんな訳で、手元に残った目玉を母親に見付からないように、僕は裏庭の隅に埋めた。
暫くして僕はすっかり隠した目玉のことを忘れていた。あんなにも夢中だった目玉なのに。
そんなある日、裏庭の隅に綺麗な花が咲いているのに気付いた。
そのとき僕は目玉のことを思い出し、そして理解した。綺麗な目玉を植えると、綺麗な花が咲くことを。
その日から僕は、毎日躍起になって目玉を探した。どこかに落ちてはいないかと必死になって探した。
しかし、目玉は見つけることは出来なかった。落ちてなどはいなかった。
だから、僕は仕方なくスボンのポケットにスプーンを入れて、持ち歩いている。僕の口には少し大きすぎるサイズのスプーンを。
だって、綺麗な目玉が道端に落ちていないなら、くり抜くしかないのだから。
猫だろうが、犬だろうが、烏だろうが、そして人間だろうが何だろうが。目玉があるものならなんでもよい。
目玉をくり抜いて裏庭に植えるのだ。
僕はただ綺麗な花が見たいだけなんだ。