猫二題
……とある蛙

   
     1

明るい陽光を浴びて
僕の黒猫は
幸せそうに膨らんだ
黒い鞠となって
朝から眠り込んでいる

彼女の黒い体毛は
朝の陽光を吸い込んで
幸せ一杯に膨らんで
頭を毛布くっつけてトグロ
を巻いた彼女のようすは黒いふわふわの
まぁるい毬だ。

この毬は凶暴だ
前足で腕を抱え込んでキックする。
爪が伸びていたら最悪だが
爪が伸びていたことは無い。
まめに飼主が手入れする。
しゃーと なく
威嚇一声

この毬は優しい
言い争っている飼主夫婦の
間に転がり込む
転がり込んで双方見上げ
にゃんと なく
仲裁一声

この毬は寂しい
独りぽっちが好きなようで、
僕が留守居した後は纏わり付く
纏わり付いて上を見上げ
にゃんと なく
安堵一声

この毬は厳しい
外へ出る時
えさほしい時
遊んでほしい時
いつでもこちらに顔を近づけ
にゅんと なく
要求一声

だから、鞠でいるときは気づくまで
飼主はじっとしている。

     2

女房のひざに抱かれて
黒猫(ルビ)は眠る。

いつものように片側の前足を
延ばして女房に逃げられないように

逃げるわけは無く
猫を撫でながら
女房もうたた寝。

逃げるわけは無くゆったりと
ひざの上に猫を乗せたまま
女房はうたた寝する。

猫はたまに薄目をあけ
確かめる。女房に逃げられないように。

逃げるわけは無く
猫を撫でながら
女房もうたた寝する。

逃げるわけは無くゆったりと
ひざの上に猫を乗せたまま
女房はため息をつく。

僕は薄目をあけ
確かめる。女房に逃げられないように。
僕とこれまで歩いてきてくれているのに感謝しながら

しかし、
そろそろ逃げられてしまう
と 感じた時
自分が猫と一緒に逃げ出した。
猫と一緒に逃げ出した。



自由詩 猫二題 Copyright ……とある蛙 2010-04-11 16:07:02
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