上高地にて
蒲生万寿

戸惑いや不安が無くなるに従い

この体もそれ程必要とはしなくなる

歩み行くにつれ

私は森となる

風の声

川の声

鳥の声

途絶える事なく

一つである

この生まれたばかりの

重い空気はどうだ

存在の確かさだ

私は最早、何ものにも囚(とら)われず

存在の真っただ中に居る

知性も感性も今は無く

何ものの隔て無く

私以前の私が

生まれる以前の私が

確実に蘇る

もう言葉も必要としない

空だとか

大地だとか

そんな名称など

あまりにも無意味だ

こうして此処に居る

それ以上、何も無い

祖先がいた時代も

これからの未来も

全ては此処に帰する

私は自由である

全ては自由である

脳よ勝手に記憶しておけ

私の世界は

お前のちっぽけな器では計る事は出来ない

何もかも言葉を越えて

受け入れる絶対というものが存在する

私は何ものでもない

ここの一部であり

全部である

そう世界だ


自由詩 上高地にて Copyright 蒲生万寿 2010-04-09 19:25:44
notebook Home