群青のサンドウィッチ
吉岡ペペロ
ヨシミはカワバタとユキオのどちらが好きなのかを考えたことがない
ユキオとサヤマのときは考えてもいたような気もする
カワバタに借りたプルートウというマンガを読みながらその考えたこともないことをはじめてヨシミは考えていた
さっきカワバタからメールがあった
うなされていたらしい、それで起きてしまったのだそうだ
ふとんをかけてあげるからゆっくりねむりなさい、といってあげた
群青いろのにしてな、
群青いろのではさんであげる、
サンドウィッチみたいにな、
食べてあげるよ、
群青いろにはさまれているカワバタを想像した
ヨシミはそれを飲み込むようにしてひとくち食べた
するとヨシミが群青いろにはさまれていた
ヨシミは夕方を見つめるのが好きだ
まだ夜のいろではない群青の空のいろが好きだった
カワバタにそれを言ったことなどあっただろうか
カワバタとはそんなことが多かった
まだ交わしたことのない話題でも以前に話したことがあったような感じで肌ざわりで会話ができた
だからヨシミはいつもいまじぶんにとって切実なことをカワバタには落ち着いて話せるのだった
ケイタイが受信を知らせてくる
きっとさびしい味がするだろうな、
やさしい味がしたよ、
おまえが宇宙にいてくれて助かったよ、おまえ宇宙にいるんだろ、
いるよ、ヨシミはそう返事してさっきの群青にはさまれていたじぶんを思った
じぶんが群青いろにうつしだされたカルテになってしまったような気がしてヨシミはなんだか虚ろになっていった
おやすみ、とカワバタから返信がきた
ヨシミはそれをひらかずにマンガの続きを読んだ
そのマンガには決まった主人公がいないような気がした
たくさん主人公がいるという訳でもなかった
アタシとカワバタ、アタシとユキオ、アタシと・・・・歌うようにつぶやいて、はじめてふたりを同時に揺らした