春雨の旋律のように
かんな
刹那に切り取られた空の下で
泣いてしまう
言えない、沈黙を守ることに慣れきって
つくしが放つ胞子に含まれる
かすかな憂うつ
あなただけでも
わたしだけでもない
春はいくつもの平等について物語るから
アスファルトから顔を出したタンポポが
ただしなやかに生きる
小刻みにふるえる唇で
はる、と口ずさむ何度も何度でも
春雨のように細やかにひびく旋律のように
わたしと踊りませんか
花びらのエスコートでワルツ
切り取られた空が落ちてくる瞬間に
また泣いてしまう
ただ何も言わずに
季節に流されても忘れないでいることが
大切なことってある
曖昧なできごとほど
ひどく鮮明に感情的に覚えてしまうから
春はそれを許してくれる
咲いた、咲いたのだ
散る前の儀式のようにあざやかに色づく
あなただけでもわたしだけでもない
このまま一緒にいていいですか