春雨の旋律のように
かんな

刹那に切り取られた空の下で
泣いてしまう
言えない、沈黙を守ることに慣れきって

 つくしが放つ胞子に含まれる
 かすかな憂うつ

あなただけでも
わたしだけでもない
春はいくつもの平等について物語るから

 アスファルトから顔を出したタンポポが
 ただしなやかに生きる

小刻みにふるえる唇で
はる、と口ずさむ何度も何度でも
春雨のように細やかにひびく旋律のように

わたしと踊りませんか

花びらのエスコートでワルツ
切り取られた空が落ちてくる瞬間に
また泣いてしまう

 ただ何も言わずに
 季節に流されても忘れないでいることが
 大切なことってある

曖昧なできごとほど
ひどく鮮明に感情的に覚えてしまうから
春はそれを許してくれる

咲いた、咲いたのだ
散る前の儀式のようにあざやかに色づく
あなただけでもわたしだけでもない

このまま一緒にいていいですか



自由詩 春雨の旋律のように Copyright かんな 2010-04-08 09:09:56
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