冬と冬 Ⅱ
木立 悟
波を追う波
何も無い青
影は淡く
砂を蝕して
艶の失い赤
光なぞる黄
高い葉が冷え
雨になる
雫の層が
睦み合う
空は順に
姿を捨てる
風を吸う夜
揺り戻す景
ちぎり埋める ちぎり埋める
流れに剥がれた灯の跡を
水たまりの空をかぶり
しんとした夜のざわめきの
ひとつひとつを越えてゆく
岩の光 誰も居ぬ道
火をくぐり
まぶしくさみしいにおい
現われては消える
まばたきの朝
ある日
生まれ直した
陽がこぼれ
花になるのを見ていた
光の赤子 窓を去る川
ひとつを越えるひとつにほどかれ
そのどちらともつかぬ双つのもの
雪のみなもとへみなもとへ歩いてゆく