monologue
高梁サトル


どこまでも遠浅の海岸で
白波を追いかける明方
目覚めると涙を舐めていた
すぐ熱いシャワーで
洗い流そうとしたのに
いつまでも耳奥から波の音が消えずに

こんな音
溺れる前に消してしまわないと

「頂いたジャスミン
蕾が開く前に枯れてしまいました
ちゃんと取扱説明書を読んで
朝夕水を与え
肥料も与え
出掛ける前にはベランダに出して
日光浴もさせていたのに
春にはみな花咲くと
少し過信しすぎていたのかもしれません
どうして私はこんなにも
あなたに頂いたものを育てることが
下手なのでしょうか
かあさん…」

何かを残したいと願いながら
すべて消し去りたいとも願う
短編小説のような潔い結実に
焦がれる季節を繰り返し

花も手向けられず朽ちてゆく
墓標の下に眠る骸たちは沈黙の彼方へと

器用にこなす不器用な指先を
アルコールで誤魔化しながら
この先もずっとこうなのだと
こんなものを続けていくのだと
ひとつの機械の歯車のように
それだけでも
まっとうできればいいのだと

だから今
私の体からする音は
硬質で無機質な
金属音でなければいけない

そう
言い聞かせて


自由詩 monologue Copyright 高梁サトル 2010-04-06 02:10:11
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