MJ
mizunomadoka

目の前に海があった。
白く塗られた桟橋を、水着の上に服を着た人たちが歩いていく。
コーヒーカップは私の皮膚を透過せずに、指先でとどまっている。
すれちがいも融合もせずに、触れあえることを不思議だと思う。
移動することで、風景が変わることも。

change of everything、とあなたは言う
真実はどんなに変形しても、真実であることにかわりはないと。
ここは、存在することが存在していることを証明している世界だと。

でも、変わらないなら、何も地球に嘘がつけないのなら
どうして私たちは選び続けているんだろう?
きみとつないでいた手がまだあたたかくて、心が躍るのはなぜだろう?

あなたはわざとカップを床に落とす。
きみの歌は私を歌に変えてしまう。

でもそれが完成形なの?

空港を出たときには、バスの乗り方さえ分からなかった。
マリア像の描かれたキャンドルと薔薇のリングを買って、
花束とメッセージカードを作った。

マイケルの写真が炎でゆれている。
抱き合って泣いてる人たちの、ひざまづいて祈っている人たちの上で、
ヘリコプターの音がしていた。
私は置かれていたノートにメッセージと名前を書いた。
そしてremember the timeをリクエストした。

数人でお金を出しあって古いトラックを買い、
この場所を目指したメキシコ人たちが国境でとめられた話をきいた。
彼らが無事にここに辿り着けますようにとみんなで祈った。

私たちは日々の祈りのなかで

願い事や感謝を
寒い朝にはシナモンを
疲れた夜にはバニラエッセンスを
そこに何かを落としていく

夢の中で
想像して信じたこの世界の中で
私たちは小さく発火する

子供たちは笑い、大人たちは
振り返る

柔らかい寝息の中で、きみはきみの夢をみている。
あなたが旅に出ると、ただ追いかけたくなる。




自由詩 MJ Copyright mizunomadoka 2010-04-06 01:07:30
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