死にゆく
寒雪


おれは今
死にゆくところだ
完了形ではなくて
進行形


頭に押し当てた
名もない墓石が
冷たさも感触も失って
宇宙空間に
放り出されたみたい


母親は泣くのだろうか
弟は順番を恐れるのだろうか
彼女は幸福になれるのだろうか
太陽が遠ざかる
脳裏に日だまりの故郷


ほんの少量
血が流れただけで
大義は成就された
………つまり
死にゆくおれの
地面に吸い取られる鮮血も
その
大義とやらを構成する
崇高なものなのだろうか
でもそこに
おれの席はあるのか
捧げた血に対する
正当な
おれのために用意された座席が


ああ
居間の片隅で
父親が
いつもくつろいだ
ロッキングチェアーを懐かしく思う


自由詩 死にゆく Copyright 寒雪 2010-04-04 20:03:43
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