ケロイド/ ****'99
小野 一縷


イカロスを真似た子
雪の夜の中 羽ばたいた


ガスマスクを着けた執刀医
薄緑の七つのライトで
その子を見つけて
火炎放射器で 射ち落とす


左腕と右肘 右半身から火をあげて
雪を溶かして 墜落した


縫い傷 何箇所?
全部で 何針?


あの子は一生
人前で羽ばたかない



夜空
水銀灯
縫い傷
醜い毛
  体
  心


汚れ
盗み
盗まれ

盛り上がった
肉 染み


「嫌だ」


あの子は もう 君と遊べない
遠い街の病院に入るんだ


午後二時
あの子の泣声を思い出して
体中の黒い糸をつままれて 泣き喚く
あの子は貧民部落で生まれた子




石でも投げろ





自由詩 ケロイド/ ****'99 Copyright 小野 一縷 2010-04-04 19:10:29
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