都会
たもつ

 
 
ぬめぬめとした悲しみが
晴れた空から降っている
ものとものとが擦れ合う音や
ぶつかり合う音が記号のように
いたる所にありふれている
スクランブル交差点を渡る人々は
無秩序な足取りなのに
真ん中に置かれた金魚鉢の水を
誰もこぼさない
ふと二枚貝が落ちている
かつては海があったのかもしれない
白蟻に食い荒らされた高層ビルが
静かに崩落している
生乾きの犬が
生乾きの臭いをさせて
ガード下を歩く
よく見ると
時々走っている
 
 


自由詩 都会 Copyright たもつ 2010-04-04 14:56:43
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