文具店
たもつ
今日はワカサギが良く売れる
いつもは店の奥まったところに並べているだけなのに
学生も社会人風の人もノートや鉛筆には目もくれない
いっしょに良い匂いのする消しゴムや
綺麗な色の蛍光ペンなどを薦めても
ワカサギしか買って行かない
おかげで完売したけれど
来る人、来る人、みなワカサギのことを聞き
残念そうに帰っていく
どうにかしよう、と試しに床に丸い穴をあけてみる
水面が現れる
釣り糸を垂らすと次々にワカサギが釣れる
せっかくなので、ワカサギ入荷しました
と看板を掲げて店頭に並べる
誰もワカサギに興味を示すことなく
店の前を通り過ぎる
それどころか
目が死んでいる、とか
生臭い、とか
文句ばかり言われる
結局すべて売れ残り
閉店後、揚げ物にして食べる
とても美味しいけれど
どれもこれも
壊れた文具のなつかしい味だけがする