もらす
あぐり



こぼしちゃいけないってがまんしているきみの
その眉間のしわが好きなんです
吐息が融解していく夜の海に
降りしきる雨はひそやかな銀

さようならをうまくただしく言おう
そのためにわたしは今日も
ほそくほそく
するどくするどくするどく痛々しく
尖らせた鉛筆で
「さようなら」を練習する

こぼれだすわたしのさいごのいたみ
それはちいさくしたたかに
きみの額で呼吸している
この夜がおわりなんだと
いつ
いつきみに囁こう

どくどく、注がれるかなしい白さにわたしの
咽があつくなる、あつくなる、あつく あつく あつく
涸れることない海へ
どこまでも泳いでいけたらいいのに。



さようなら
さようなら
さようなら




その眉間のしわが
大好きでした







自由詩 もらす Copyright あぐり 2010-04-02 23:19:43
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