キッチンドリンカー
森の猫
欝になり
しばらくして
料理をすることが
困難になった
そして この10数年
簡単な料理以外は
作らなくなった
末の子は
あたしの手料理の味を
知らずに小学校にあがった
だが このご時世
手料理をせずには
家計が成り立たなくなる
あたしは自分を奮い立たせた
好きな焼酎を炭酸で割り
飲む
料理の前には
キッチンカウンターに
かがみこむほどの憂鬱
初めは
勘をとりもどすまで時間が
かかった
夕食を作るための1日
昼間は寝ないと
夕方から調理にかかれない
1杯 また1杯
じゃがいもの皮をむく
キャベツを刻む
そのたびごとに
飲む 飲む 飲む
手料理を始めて
半年がたった
コンビニ弁当や宅配の夕食に
慣らされていた子供たちは
すっかり
あたしの薄味料理に染まった
”ママのお料理、何杯でもいける!”
その言葉に励まされ
今日も作る
10ヶ月が過ぎた
近頃 メニューが浮かばない
そろそろ限界か
また 舞い戻りたくはない
酒の量が増える
あたしはもう完全なる
キッチンドリンカー
この場所を離れない限り