言い聞かすひと
恋月 ぴの

これって何かの間違いだったりして

夕方近くに先日面接受けた問屋さんからの着信
胸の震え抑えつつ電話に出てみれば採用しますの吉報だった

他の誰かと間違えていないよね

いつもの野良猫に尋ねても知らん顔で身繕いしてるし
ふにゃり「ら抜き」は普段どおりだけど
じんわり嬉しさこみ上げて「やったね!」なんて指を鳴らしてみる

それにしても就活中って中途半端な過ごし方してたな
自由になる時間いっぱいあったのだから
もっと有意義に使えれば良かったんだけど

私って気が小さいのかな

足しげくハローワークへ通ったり
部屋に戻れば只ひたすらと電話かかるの待っていた

あれほど自由な世界に憧れていたのにね
職探しよりもっと大切なことあったような気がするけど
憧れは憧れで終わってしまうものだし
自分以外の自分に成り得ないことぐらい判ってる

物足りなさもあるんだけどさ

身繕いにあきたのか野良猫は陽だまりに寝転んでいて
木蓮の白い花咲き誇る甘い香りに癒されて

職にありつけた幸せよりも
これでよいのかと躊躇し続ける心模様に

贅沢は敵だ

そんな遥か昔のことばを私自身に言い聞かす






自由詩 言い聞かすひと Copyright 恋月 ぴの 2010-03-29 23:20:46
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