かなしみ等式
あやさめ
哀しみの絵とその音のない映画から
スクリーンが破かれて救い出された
洪水のない水浸しの家はとうに歩けない
哀しみのない歩き方はやがて窓の外に出て
降り積む雪の夜を滑り出すかどうかは
知らないだけでいいから
それでもこのべと雪の降り積む夜は
否応なく誰かの腕を切り落とす
目のない動物が声をあげずに笑うんだよ
と語り継ぐ
やがて明けた空から落ちてこなくなったパラシュート
喜びのあまり打ち上げられた銃弾が戻ってきても
誰も気にしないでと言いたそうにしているが
喜びの声から始まるバタフライが
ところどころで山に当たっては層を反転させ
彼らに霰の降り積む夜をプレゼント
それでもこの霰が降り積む夜は
かの有名な砂漠に誰も癒しを与えないから
向こうの彼女は声をあげずに泣くんだよ
と語り伝える
いずれにしても彼ら全てが身勝手すぎてしょうがないと
向こうの道で車の中で
選ばれなかったある一人の若者が
声をあげずに泣くことには違いない
人称は人称ゆえ不特定
ぼくらの等式は任意の数字と
同じ類型で今日も整理される
同じ類型で