桜 時
塔野夏子

桜の花が咲く 花が散る
花の影がわたしを斑に染める

晴れた空はうつろに息づいている
わたしにきららかな憂愁が降る

胸のうちをほの白い人の列がゆく
半透明に やや蒼ざめた横貌を見せて
葬列のようにゆっくりとゆく

何処から 何処へと
あのひとの気配を滲ませながら

桜の花が咲く 花が散る
花の影はわたしを斑に蝕む

何を忘れ 何を呼びさまし
わたしは今此処に立ちつくす

晴れた空はうっすらと微笑っている
わたしをきららかな憂愁が覆う

――葬列のようにゆっくりと
目のまえをほの白い人の列がゆく
一言も発さず こちらに目を向けることもなく





自由詩 桜 時 Copyright 塔野夏子 2010-03-29 20:21:41
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