鸚鵡返し
高梁サトル


約束の時間に間に合う為に道路に飛び出してきた子猫を轢殺す
目の前の死にそうな人間を救うより偉業を成し遂げる為に労力を使う
そんなあなたは時々泣いてみせる
苦しい重荷を一身に背負ったヒロイズムに酔いしれて

ピンぼけした写真の兵士が血まみれで笑ってる
無名のジャーナリストが必死に悲劇を訴えても
誰も気に留めないことを一体誰が嘆くのか

ねえ、
蛇口を捻る力さえない者は
末期の水さえ与えられずに消えてしまうの?

選択肢は無限ではなかった
何を間違ったというの
気付いたら別の場所にいたなんて

これが緩やかな世界の自殺だというのなら
明方にうつらうつらと覚者が見た夢なのでしょう

それでもあなたは
言葉より大切なものがあるんだよって
訳有り顔で囁くのね

罵られた方が数倍救われる


自由詩 鸚鵡返し Copyright 高梁サトル 2010-03-27 11:53:38
notebook Home