告げる白
黒乃 桜
僕は君にはなれない
誰か別の人にはなれるのに
綺麗な服を着れば
おさがりのルージュを塗りたくれば
別の人にはなれるけど
僕は君にはなれない
皮一枚隔たりがもどかしい
変身と鏡に投げ掛ければ
タンスの中の猫を身につければ
別の僕にはなれるけど
僕の胸は膨らんで
また君とは違うモノになる
僕の脳を蝕んで
何も解らなくさせてくれれば
黙ることしかできない
騙すことしかできない
僕は君にはなれない
個体差などなくなってしまえ
「愛とか恋とかじゃなくて僕は君になりたかった」
一つになってしまいたかった
喉に引っ掛かったままの
僕の告白はただ一つ
「ただ ただ」
この嗚咽も悲鳴もなにもかも
君とは違う
僕は 生きる
言葉を紡ぐしか脳の無い
君にはなれない
僕は 生きる。
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想撮空間。