許せない春
因子

ゆるして
あたまのうしろの
いちばんやわこいところを
食べてしまったこと


知らない間に
食いしばるのが癖になっていた私の歯は
削れてひどく不格好になり
喋れば口内を傷つける
春の兆しも端から食い殺す
コンプレックスがまた増える


おいしかったの
春はなんでもやわらかい
とがめてくれるひとがいないから
ゆるしてくれるひともいない


自由詩 許せない春 Copyright 因子 2010-03-24 22:54:16
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