人は少しずつ変わる(中山さん)
オイタル

人は少しずつ変わる

まずぼくに
最初の紅茶がやってくる
砂糖の少ない紅茶が
ぼくはしばらく
砂糖の少ない紅茶をすする

それからゆっくりと
考える
だれがどんなふうに
変わったかということを

腹の太いアベは昔からあんなやつで
結局あんなふうなアベなんだと
アツコちゃんはやっぱりアツコちゃんだけど
少し口数が減ったかしらんと
それだけ

自分のことは考えない

紅茶のカップから湯気がたって
紅茶だから紅色の
湯気なのかなと
そんなことを

人を裏切ったり
自分を騙したり
騙してはいないと騙したり
他の人ではなく自分をなら
いくらでも騙していいのだと
勘違いしたり
自分を騙していないなどと自分を騙すより
人を騙した方がよほど正直だなどと
勝手なことを思ったり
土手の上で石をけったことや
明日のことを思い出したり

そして
自分のことは考えない
考える間もない
考える間もなく次の紅茶が
やってくる
皿の上でカップがカチャカチャ鳴って
こうして

こうして
人は少しずつ変わる


自由詩 人は少しずつ変わる(中山さん) Copyright オイタル 2010-03-22 22:10:14
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