迷宮の殻
月乃助


ここは 来たこともない街角
さもなければ
山色の険しいけもの道 
道標もない白い雪原

あたしは一人ぽつねんと 立っている

足あとさえもなくして
道に迷ったのです

どうしてか 子どもの声ばかりが、遠くにする

あんなにしっかりつないでいた
手の 温もりは消え去り 

誰もそこにはいないのですから
いて欲しい時には、姿をみることもなく
期待をすることもなくなった

足かせを引きずるように
通り過ぎる人は、みな目をそらせながら
行き過ぎていくばかり、

知らない鳥の
卵の殻を身にまとった
あなたは誇らしげに言った
生まれ変わった と、
返事もせずに
新たな暮らしを始める この先
あたしは、その中に入っていないのですか

どちらに行きましょうか?
ただ、歩いてきた道を思い出しながら、
震える体を抱きしめた
あたしを支えてくれた人

もう忘れなさい
一人で歩くことがそんなにも、
悲しいというなら

道に迷いながら
閉ざされた迷宮を彷徨い
別な道を探せということなのですね
そこでは、きっと
知りもしなかったすばらしい思想が
あたしを待っていてくれる

それに胸をふくらませながら






自由詩 迷宮の殻 Copyright 月乃助 2010-03-22 15:40:46
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