ざわめく森の中にあって
朧月

ざわざわしている森の中で
私の命だけが静かでいる必要はないのだ

煌いている光の中で
緑にも影がある 川の光も影を持つ

入ってみない?
なんて聞く前に足を踏み入れてもいいのだ
川には持ち主はいないのだから

湧き出ている水はいつから生まれた?
だれからの命かを考えないでいい
のか 探すのは木漏れ日が心地いいから

学生服のまま 泣いているあのこを想う
あれは あれは
だれでもない ここに住んでいた少女

ざわざわしている森の中で
私の心だけが静かでいる必要はないのだ

風に揺れている枝 葉の先まで
黄砂に運ばれた かの地の少女の涙は
つもって その重さこそが
命の静けさであるのかもしれないのだから



自由詩 ざわめく森の中にあって Copyright 朧月 2010-03-22 09:26:14
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