太陽の種 / ****'02
小野 一縷

  − エーリスに捧ぐ −


太陽が 沈む ぼくに 
巨大な 火焔 膨大な 熱量
太陽が 沈む ぼくに

太陽の 中の ぼくの 中で 太陽が 燃えている
若さ そのオクタン価の高い年月を 燃料に
全身を 骨肉 血管 神経を 列火が巡る

血走る眼 
その中心 瞳孔は 陽炎のように潤んで 
その黒点に 太陽の影 きみ 月が映る


夜明けの刻
一筋の光線が 今 
一本の道筋が 今
一粒の恒星 ぼくに 開示される 

何処までも 全て 見渡せる
だが 眩しさに 滲み出る 涙で
ますます 潤む きみの 寝顔が
この 覚醒 完璧へと向かう燃焼を 唯一
化学的に 阻害する

ただ
光を 熱を 信じる 
この身体の 燃焼が
光熱が きみに伝導すると 信じる
そして いつか 涙を 蒸発させる
その時 この眼は きみだけを映す 鏡になる

「まだ 足りない 熱が 光が 足りない」 

悲劇的な 神曲の調 きみの在り方 
日常的な 三文芝居 ぼくの在り方
そう きみは ぼくの羨望 そのもの


約束する 
この太陽が 燃え尽きるより早く
ぼくの 知らぬ 凍てつく領域
永久凍土に 優しく 抱かれる 
きみの 朽ちることのない 肉体に
小さな火を 灯すことを 





自由詩 太陽の種 / ****'02 Copyright 小野 一縷 2010-03-22 07:10:25
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